『クリュセの魚』(東浩紀/早川書房)

批評家として知られる東浩紀さんはぼくの中では「遅れてきたSF作家」です。
三島賞受賞の小説デビュー作『クォンタム・ファミリーズ』(河出書房新社)に続く今作で、その思いを新たにしました。あと10年ほど早く、それこそ90年代から小説を書いてくれていたらよかったのにとも、今のこの時点だからこその充実した結実というようにも感じられます。

(もちろんその間は批評家としてご活躍されていたのであくまで架空の選択としてなのですけど、もし最初から小説プロパーだったらという可能性について考えてしまいます)

これはちょうどこの小説内でくりかえし描かれる「選択と拒絶」そして「やりなおさない力」にも通じていますね。

ならばこれでよいのだと思います。

前作と同じく「SF」と「家族」と「愛」の抒情的な融合が魅力の本作ですが、前作ほどSF的なガジェット/ターム過剰ではなく、ストレートでセンチメンタルなボーイ・ミーツ・ガールものになっています(がもちろんちゃんとSFしてる)ので、今まで「SFだから」という理由で敬遠されていたかたには前作よりもおすすめかもしれません。

次回作が愉しみな作家さんです(というのもおかしなぐらいすでに充分なキャリアですが)。

コメント
コメントする








   入力情報を登録しますか?
この記事のトラックバックURL
トラックバック
バーナムスタジオ

categories

archives

links

profile

others

search this site.