『聖闘士星矢』について〜テレビ番組としてのアニメ〜

アニメの需要のしかたも映画やネット、ビデオグラムと多様ですが、常に最も重要であり続けたのは「テレビ番組」としてのアニメなのではないかと思います。
毎週1回30分放送という強固なフォーマットは大きな制約でありつつも、アニメの娯楽強度を高めるたしかな手法として確立しています。これはマンガが連載形式でならではのおもしろさを獲得したのと似ています。

アニメビジネスはその黎明より映画による興行と、テレビによるスポンサードの両輪でまわっていました。

テレビ番組としてのアニメの背後にどのような制作費捻出の仕組みがあるかというと大きくふたつありまして、「視聴率」によってまかなわれる場合と、「商品の売り上げ」でまかなわれる場合です。
前者はたくさんのひとが見てくれればそれだけ商品の認知度があがる/企業イメージがよくなると考えるスポンサーのかたがいらっしゃると成立します。
後者はおもちゃやゲームなどアニメによって購入意欲をかきたてることで販売につなげられると考えるスポンサーのかたがいると成立します。
具体的に申し上げますと『サザエさん』は前者で『プリキュア』は後者です。
最近の映像そのものを売るビデオグラム主体のビジネスも広くは後者に属します。かつてはおもちゃメーカー単独だったものが、アニメをマルチユース化して映像パッケージも売ります、書籍も売ります、音楽も、ゲームも、パチンコも、ソーシャルゲームも……と損益を共有する各社がその規模に応じた比率で制作費を出し合ってつくるのがいわゆる製作委員会方式と呼ばれるものです(ここが肥大化して今のアニメビジネスがあります)。

そしてアニメに限らず映像には「常にひとに見られたがる」本能がそなわっています。これは映像をもっと情報のレベルまで還元していくと「情報は常に自由になりたがっている」ということになるのですが、この「見られたがる」のが映像の本質です。

そしてその本能に最も親和性の高いメディアこそが、ほとんどの世帯に普及し無料で視聴できるテレビなのです。

老舗のアニメスタジオには各社それぞれサンライズの『機動戦士ガンダム』や東映アニメーションの『ドラゴンボール』やガイナックスの『新世紀エヴァンゲリオン』などなど、その本能がテレビと結びつくことで奇跡的な開花を遂げた作品が必ずあるものなのですが、その中でも里見が「最強のテレビアニメ」だと思っているのが『聖闘士星矢』です。

これはもう素晴らしいひとことです。

「テレビ番組である」とはどういうことかというと限られた期間、限られた予算、限られた表現の中で追及する最良の表現です。リミテッドな環境で考え抜かれた演出・作画・彩色・背景……どれをとってもアニメが見られることに耽溺しています。
しかもその後の萌芽を感じさせつつも「ふつうのアニメ」としてはじまったのが、エピソードを追うごとに熱を帯びてくるのがはっきり感じられるのです。
これは人気次第で放送期間が延びていくテレビ番組ならではです。
おそらく映像が完成するたびにスタッフが「監督たちヘッドチームが何を作ろうとしているのか」に気づき、「視聴者が何を見たいか」を取り入れて、放送期間のあいだあたかも制作者と視聴者の共同作業のように洗練され高められていったのではないかと想像します(東映アニメーションで双璧をなす『美少女戦士セーラームーン』もおそらく同様です)。

これだけ『聖闘士星矢』に特化したレイアウトやパースやタイミング……がシリーズを通してどうやって貫けたのか、とにかくすごいことが当たり前のようにおこなわれています。

これは機会があるたびに発言させていただく所存なのですが、日本のテレビアニメ史が産んだ最強のアニメーターはこの『聖闘士星矢』のキャラクターデザイナーをつとめた荒木伸吾さんだとぼくは思っています。

今回 Blu-ray BOX が発売されたことでその業績の結晶(しかも迷いながら深化/進化していくさまがシリーズ中に刻まれている)が輝きを失っていないことを確認できるのはまことに喜ばしく、願わくばその本能が満たされるほど多くのひとに見てもらい、永く愛されてほしいものと思います。

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