今宵われら月を杯にして

ニール・スティーヴンスンひさびさの長編『Seveneves』が発売されてましたのでおくればせながら読んでみました。

『Anathem』や『Reamde』(ひとによっては『The Mongoliad』もですか)でなんかちがうなと感じてたみなさま!
これはまさに

「おかえりなさい!」

です。長い旅(『クリプトノミコン』以降ってことはいったい何年ですか)で、もうSF本流(?)への帰還は望み薄だと思われていた我らが王の凱旋です。

おめでとうございます!

ありがとうございます!

なにしろ冒頭1行目で月が崩壊します。そして7つにわかれた月がたがいにぶつかりあい無数の破片になり、地球を取り囲む「ホワイト・スカイ」となり、重力に引かれた月の破片は「ハード・レイン」となって5000年にわたって地上にふりそそぐことが判明します。「ハード・レイン」が起こるのは2年後。それまで人類に何ができるのか。

てな感じで第1部、第2部は人類70億まとめてぶっ殺す気満々で「もうやめてあげてー!」という滅亡まっしぐらなたたみかけディザスター小説の大傑作です。ここで終わってもまったく問題ないです。というかお腹いっぱいです。ありがとうニール。待っててよかった!

それなのに!
なんでこんなにページがあまってるの?
え? 第3部?
まだ続けられるの?

というわけで第3部の冒頭は極太ゴシックで

「FIVE THOUSAND YEARS LATER」

ですよ。
なんという蛇足!
なんというSF!

テラフォームならぬ「テリフォーム」(荒廃した地球をかつての環境にリフォームするんですからね)まっただ中の遠未来で、まさかのファースト・コンタクトもの(?)に。
第3部で描かれるのはうってかわって可能性と希望を提示するポジティブな人類への讃歌(であると同時に本編としては偉大な蛇足)です。内容は人間たちのドロドログダグダですけど。

好み次第で『スノウ・クラッシュ』派や『ダイヤモンド・エイジ』派もいるでしょうけど、この『Seveneves』がおそらくニール・スティーヴンスンのベストなのではないかなと思います。

 
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The Borough Press
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(2015-05-21)


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