みそ汁とスプーン。

打ち合わせのあいま、この時間になにかおなかにつめておこうとぼんやり歩いていたら、喫茶店のホワイトボードに書かれた「本日のおすすめカツカレー」が目にとまりました。

喫茶店は時間のコントロールがしやすいので、外での打ち合わせが多いぼくにはとてもありがたい存在です。

ちょっと古風なカツカレー(もちろん真っ赤な福神漬つき)にはみそ汁がセットになっていて、ふとこどものころのわが家もカレーの日はみそ汁だったことを思い出しました。

運動神経至上主義の世界に生きるこどもにとって、ほとんどの場面で本好きでいることは不利にしかならないなか、数少ない利得のひとつとして

「走れメロス」以外の作品で太宰治と出会える。

というのがあります。
教科書に載るために書かれたような「走れメロス」がこの世に存在するのは教科書の編集者にとってはまさに幸運で、太宰治には不運な気がします。
といいつつぼくの太宰ファーストコンタクトがなんだったか覚えてないのですけどね。
でもその最初期に『斜陽』があったのはたしかです。

というのもわが家でカレーライスとともに出されたみそ汁はスプーンで飲むことになるのですが、こどものぼくはスプーンの先端から音を立てないようにすするのです。
『斜陽』を読まれたかたはご存知だと思いますが、これはその冒頭で丹念に軽やかに描かれる「お母さま」のスープの飲みかたなのです。

これはもう染みついた癖になっていて、おとなになった今も無意識のうちにスプーンの先からスープを飲んでましたし、ステーキは全部切り分けてからフォークを右手に持ち替えて食べてました(こちらも「お母さま」の食べかたです)。

喫茶店のカツカレーとみそ汁の組み合わせから、はるか昔、読んだ内容もうろ覚えの『斜陽』が急に浮かびあがってきて、どうせならこどものぼくがスプーンでどうやってカツを食べてたのかのほうを思い出せればいいのに人間の記憶って都合よくいかないものだなあと、スプーンの先からみそ汁をすすったのでした。

それはそれとしてカツカレーおいしかったです。






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