アドバンスドr戦略

2月27日はわが業界的には、アニメ界の生ける伝説ことJCスタッフ松倉友二プロデューサーの誕生日として祝日となっていますが、実は弊社の創立記念日でもあります。

有限会社バーナムスタジオの創立は今をさかのぼること13年前の2003年。
なんとなく14期目の日々を過ごしております。

さて、こんなとりえもなければガッツも足りない弊社ですが、28歳のときにうっかり起業してしまい、うっかり10年以上存続してしまったため、起業のご相談に乗る機会がそれなりに多いです。

「ノウハウと人脈は無料」

が創業以来弊社のモットーですのでご相談には真摯に対応しております。

ですが「起業しようかどうか迷われている会社員」のかたからするとあまりに簡単というか身も蓋もない説明に聞こえるようで「それは里見だからうまくいったんでしょ?(もう少し私の参考になる話をしてください)」とおっしゃられることしばしばです。

これは起業リスクの見積もりかたの問題なのですかね。

具体的には、会社をつくっても倒産率が90%だとか生存率が6%だとか厳しげな数字が広く知られているからではないかと思います。

とはいえ折に触れて申し上げているのですが、「会社経営」の難易度は「自動車の運転」ぐらいです。
シューマッハやセナを目指したらそれはむずかしいですが「軽自動車で近所に買い物に行く」ならけっこうな人が可能なのではないでしょうか。
運転は失敗するとひとを殺したり殺されたりするのでリスクはむしろ会社経営のほうが低いかもしれません(保険も自動車のほうが充実してるわけで)。

起業したいと思ってるひとを躊躇させるリスク(つまり漠然とした倒産の恐怖)の正体、それは「お金」です。

経営リスクは「お金」と「ひと」にあります(それより大きなファクターは「運」ですがそれこそ身も蓋もないといわれるのでここでは割愛)。「ひと」もだいたい「お給料」ですのでまとめて「お金」だけでもいいです。

その恐怖感と裏腹に「どうすると倒産するのか」というと、ほとんどの会社員のかたは知りません。
明快かつ簡単にご説明しますと、

「ギブアップする」と倒産です。

裏をかえすとギブアップしないとなかなか倒産しません。
そしてお金を払う側ももらう側も倒産されると大変困るので「マジヤバいっす」と正直に告げるとだいたいやさしくしてくれます。

ただ多くの会社員のかたは上記と同様の理由で会社の口座現金が枯渇するという状況を想像したことがないので、取引する相手を選ぶ目は養っておいたほうがいいです。簡単に「やー会社の決済が通らなくて。ほんと困りますよね」とか言い出すので。これは起業直後だとマジで死に至ります。

なので一般論としては「太い金づるを複数本持って独立する」というのがリスクの低い起業です。
反対に「一社にぶらさがる」や「細い金づる数本」はリスクが高くなります。
あとお金の支払いが遅れても怒らないぐらい余裕のある取引先とか、鷹揚に前払いしてくれるクライアントさんとか最高です。

ぼくはアニメしかわからないのですけど、今業界はとても活況を呈しすぎてとても疲弊しています。
そんなタイミングでビデオグラム産業がピークを過ぎ、既存の委員会とは質の異なる新しいクライアントが国内外から次々と現れ、そんなタイミングで業界黎明期から続けてきたいわゆる「紙と鉛筆」の時代が終わろうとしていて、デジタル作画へとシフトと制作フローの大きな変更が進められています。
また先日申し上げたとおり、ディスプレイ戦争とも呼ぶべき闘争も勃発しています。

まあ控えめに申しあげても混沌といってよい時代ですね。

この未曾有の混乱を迎えるにあたって、ぼくがどなたかから「起業したいんだよね」と相談を受ける場合、3社以上のクライアントと握れているなら気軽に独立をおすすめしています。

これは弊社のやってきたことをご存じのかたであればご理解いただけるように、実は創業から一貫しています。

里見は進化論というか生物学にたとえるとアニメ産業で「r-K戦略説」のr戦略的なことをしたいという大前提があります。
あくまでたとえ話ですので簡単にですが「r-K戦略説」とは何かをぼくの言葉で説明すると、子孫をどう残して繁栄するかのセオリーです。r戦略は「小さい卵をたくさん産む」で、K戦略は「大きな卵を少し産む」です。まあざっくりそんなことです。
で、厳しい環境ではr戦略(安定した環境ではK戦略)が優位といわれています。

ぼく(というか正確には10年以上前のぼく)が考えていたのは、おもに「技術革新」と「外圧への抵抗」でした。
「技術革新」はちょうど今3DCGやらデジタル作画やらの真っ最中なのでわかりやすいですが、当時から遅かれ早かれアニメのつくりかたが大きく変わることは予見されていました。
またそのころ考えていた「外圧」を具体的に述べると、amazon や iTunes Music Store (や、ちょっと遅れて YouTube )あたりであったように思います。

そして日本のアニメが「特別」である最大の理由は、「日本語」のおかげだと思っていました。

どういうことかというと、

・「日本語」が壁になって(おもに英語圏から)守られている
・だけど話者が1億数千万人もいるのでマーケットとして成立している。

ということです。
そのおかげで海外(おもにアメリカ製)の映像に席巻されることなくほどよく共存してきました。もし日本が英語圏になっていたら、もし日本の人口が半分以下だっら、この状態にはならなかったでしょう。

そんなのんきな共栄圏が「外圧」によって「経済」にさらされると厳しいなあと思っていて、いろいろなメーカーさんにお声がけしてもっと大きくて強力な「大アニメ共栄圏」みたいなものをつくろうとご提案してまわってました。
これが若さというものです。
もちろんそんなものが存在してないことからもわかるように、里見の説得というか説明はうまくいかず野望は潰えることになるのですが(そんな動きの副産物が「キャララジオ」でした)、そこがぼくのターニングポイントになります。

「やはりがっちり業界全体でまとまるより、業界内での激しい競争のほうが現実的な解だな」と考え直しまして、みんなに独立をそそのかし続けるという今のスタンスになりました。
それから10年以上になりますので多少は競争激化に貢献できたのではないかと思います。

ですので、里見のアドバイスは中立ではなくある意味ポジショントークです。

里見を選んで起業のご相談をされるということは、(リスクが高すぎると判断しない限り)背中を押されるということですので、うっかりだまされて起業してしまわないよう自分の頭で考えるのが肝要かと存じます。



これからもバーナムスタジオをご愛顧よろしくお願いいたします。

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